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「味」の世界史(知っておきたいシリーズ)


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教育 ブック
開発者 NOWPRODUCTION, CO.,LTD
無料

「大航海時代」の動因はスパイス! 歴史を動かした「味」のおもしろ世界史。

甘味、塩味、酸味、苦味、うま味――。
この味覚を中心に、世界史に影響を及ぼした「味」への飽くなき希求を描く。
「味」に秘められたグローバルな歴史がわかる、おもしろ世界史。

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※本文抜粋※

◆Ⅱ 自然界の多様な味 4 刺激としての辛味
【辛味のチャンピオンだったニンニク】

ピリッとくる刺激的な辛味食材の代表が、強い香りをもつユリ科のニンニクである。
ニンニクの原産地は、西アジアから地中海沿岸とされる。
四千数百年前の古代エジプトで、現存するクフ王の巨大ピラミッドが建造された時、
強壮剤としてタマネギ、ネギなどとともに労働者に与えられたのがニンニクだった。

古代ギリシアでも、ニンニクは神とつながる野菜とみなされた。
天上と冥界を司る女神ヘカテのためにギリシア人は十字路に石を積んだが、
新月の夜にはヘカテのためにたくさんのニンニクをその上に積み上げた。
ギリシアでは、冥界とニンニクの匂いを結びつけてイメージしていたようである。
夜ごと起き出して人の血を吸うとされた吸血鬼ドラキュラは、
アイルランドの作家ブラム・ストーカーの怪奇小説の主人公だが、
ニンニクを極端に嫌うとする想定は、古代ギリシア以来の発想の延長線上にある。

醜い帝都ローマを美しいローマに変えようとして、部下に放火させてローマの大火災を起こし、
犯罪が発覚しかかるとキリスト教徒に罪をなすりつけて大弾圧した皇帝ネロも、
ニンニクの辛味の愛好者であり、「アイオリ」というニンニク入りのソースを考案するほどだった。

ニンニクは十字軍の兵士により西ヨーロッパに伝えられた。
その強い香りはペストなどの疫病にも薬効があると考えられ、万能薬として扱われた。
ニンニクを英語でガーリック(garlic)と呼ぶが、その語源はガー(槍)のように先が尖ったリーク(ネギ)の意味である。


◆Ⅶ うま味追求の時代 1 隔離された甘味と嗜好品
【もてはやされるミシュラン・ガイド】

1900年のパリ万博の際に、タイヤ会社のミシュランはドライブ旅行を楽しむ顧客へのサーヴィスの一環として、
ホテル、レストラン情報を集めた『ミシュラン・ガイド』を3万5000部印刷し、無料で配布した。

星は三段階からなるが、1つ星は、その分野でとくに美味しい料理を出すレストラン、
2つ星は、きわめて料理が美味しく、遠回りしてでも訪れる価値があるレストラン、
3つ星は、卓越した料理が味わえ、それを味わうこと自体が旅行の目的になりうるレストランという意味である。

2007年にアジアで初の東京版が発刊されたが、匿名調査の結果、
東京で3つ星を獲得したレストランの数はパリに次ぐ8店、1つ星のレストランは世界最多ということになった。
調査にあたった責任者は、「東京は世界一美食の町」と語ったという。
うま味づくりの伝統とセンスで、日本料理はその潜在的な能力を顕在化しつつある。

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※本書は角川学芸出版・平成20年6月25日発行「知っておきたい「味」の世界史」のiPhone/iPadアプリ版です。